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福岡でよくみかける玄関先に飾ってある お猿の面の意味

実は佐賀出身の僕ですが、福岡に来てから とても不思議に思っていたことがあります。

▲ よく民家の表札の横などに飾ってある この お猿の面。

最初は干支の飾り物をしまい忘れているのかな?などと思っていたのですが、よく考えると申(さる)年は ずいぶん前のこと。

あまりにも頻繁にみかけますし、僕の地元ではそうった風習はなかったので とても気になっていました。

僕のように県外から来た人で(もしかしたら福岡出身の人でも)気になっている方も多いのではないかと思いましたので この お猿の面に関して ちょっと調べてみました。

▲ ネットなどで調べてみるとどうやら みなさん、福岡市早良区の藤崎にある「猿田彦神社」という神社でこの お猿の面を買ってきて飾っているようです。


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▲ 地下鉄藤崎駅のすぐそばです。

▲ わりと こじんまりとした神社のようですね。

▲ ところどころに赤いほおかむりをした お猿が鎮座しています。

▲ 年に数回、庚申日(こうしんび)とよばれる日が決まっていて、その日に猿田彦神社へ行って お参りをし、お猿の面を買うという風習があるらしいです。

お猿の面を玄関先に飾っておくと魔除けや幸せを招いてくれるという効果があるらしいです。

最近では猿は木から落ちない、ということで受験生などにも人気らしいです。

▲ なるほど、そういうわけで飾っていたのですね。

いや〜、気になっていたことが解決できてよかった!

・・・と言いたいところですが、そこから先を深追いするのがこのブログです。

▲ そもそも、なぜ「猿」なんでしょうか。

猿田彦神社だから「猿」なんでしょうけれど、なにか釈然としません。

ということで、さらに深く調べてみました。

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もともとの起源をたどると、「庚申待(こうしんまち)」というものが源流にあるそうです。

人間の体の中には「三尸(さんし)虫」という虫がいて、日々の悪事を監視していて、庚申の日(暦には十干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞が決められている → 詳しくはこちら)に寝ている間に閻魔(えんま)大王に その悪事を報告しに行くと言われていました。

そして報告された内容によっては寿命が短くなったり、死後に地獄に落とされたりするのだそうです。

「じゃあ、寝ている間に三尸虫が閻魔大王に報告にいくのなら、寝なきゃいいじゃん!」

ということで始められたのが庚申待です。

庚申待の時には近所の人達で集まって徹夜をして お酒を飲んですごす ということが全国的に流行していたそうです。

▲ 「庚申」とか「庚申塔」と書かれた石碑を見たことがある人も多いのではないでしょうか。(※画像はWikipedia 「庚申塔」より)

この石碑は庚申待を3年間、18回繰り返したことを示すために建てられたもので、各地でみることができます。

▲ そして、それとは別に日本神話に登場する神「猿田彦」を信仰する文化がありました。

こちらも全国各地に上の写真のような「猿田彦」と書かれた石碑がありますので見たことがある方も多いと思います。(※写真はWikipedia 「中岳 (鹿角市・八幡平市)」より引用)

天孫降臨の際に道案内をしたということから、道の神、旅人の神として各地で信仰されていたそうです。

江戸時代中期頃になると、庚申待の「申」つまり「猿」が、「猿田彦」の「猿」をミックスして信仰されるようになってきました。

そのため、庚申待の時には猿田彦を崇めるという風習も生まれてきたのだそうです。

そして、「三尸虫が閻魔大王に報告にいかないように〜〜〜」というものが、だんだんと解釈が変わってきて「猿(猿田彦)を信仰すると幸せが訪れる」という具合にマイルドなものになっていったのだと思われます。

▲ 背景を調べると、ちゃんと深〜い意味があるのですね。

▲ よく見ると、明日、8月22日が庚申日ですね!

明日は寝ている間に三尸虫が閻魔大王に日々の悪事を報告に行く日ですので、お心当たりのある方は寝ないほうがいいかもしれませんよ。

もしくは猿田彦神社に行って お猿の面を買って飾れば なんとかなるかもしれません。ただ、参拝者は めちゃくちゃ並ぶそうです。

【参考文献リスト】
猿田彦神社
・Wikipedia サルタヒコ
・Wikipedia 庚申待
・Wikipedia 庚申塔

Y氏(山田全自動)
ふるほん住吉店主:Y氏(山田全自動)
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福岡で古本屋「ふるほん住吉」の店主をしつつ、ブロガー/イラストレーター/執筆業などをしながら自由気ままに暮らしています。著書:福岡路上遺産(海鳥社)、福岡穴場観光(書肆侃侃房)、山田全自動でござる(BOOKぴあ)など
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