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北九州の成人式で着用されているド派手な衣装のルーツを探ってみた

北九州のド派手な成人式。あのスタイルが確立されるまでのルーツを探ってみました。DSC03381
▲ みなさん、北九州と言えば何を思い浮かべるでしょうか??

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▲ 北九州といえば小倉城。

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▲ 北九州といえばリバーウォーク。

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▲ そして北九州といえば・・・・・成人式!

ド派手でキンキラキンの成人式は毎年何かと話題になっていますね。

Keyword
▲ Googleで「成人式」と検索すると関連キーワードに「北九州」と出るほど。

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▲ 今年の成人式もスゴイ衣装のオンパレードでTVやインターネットなどのメディアを騒がせました。

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▲ でも皆さん、疑問に思いませんか??

彼らはいったいどこで衣装を調達しているんだろう?と。

これほど特殊な袴(はかま)が既成品であるとは思えませんし、かといってオーダーして新調するとなると相当なお金がかかるハズ。

衣装にガッツリ刺繍で名前が入っているものもあるし・・・。

やはりオーダーで作っているのでしょうか?

和服はとても高価ですから数十万円どころかヘタしたら百万円ぐらいかかってしまうのでは?!

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▲ 気になったので北九州出身の人に聞いてみたりインターネットで調べたりしていると、どうやらみんな小倉の「みやび」という貸衣装のお店で調達しているようです。

これはどんなお店なのかぜひ見てみたい!そして先ほどの謎を解明してみたい!

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▲ ということでさっそく小倉へむかってみました。

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▲ 駅前でタクシーに乗り「みやびという貸衣装のお店に行きたいのですが・・・」と言うとすぐに「はい、みやびね」と言われて地元での認知度の高さに驚く・・・。

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▲ 小倉駅からタクシーで約10分、宇佐町にある店舗に到着しました。

住所:福岡県北九州市小倉北区宇佐町1-4-20

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▲ ここであの成人式の衣装が・・・?

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▲ 今回お話しを伺わせてもらうのが「みやび」の代表 池田雅(いけだみやび)さん。

Y氏

「今日はいろいろとお話を伺わせて下さい!」


池田さん

「はい、よろしくお願いします」


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Y氏

「それにしてもすごい数ですね〜!」


池田さん

「そうですね、たぶん県内では最大級の品ぞろえだと思います」


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Y氏

「これだけたくさんのデザインがあると決めるのにも苦労しそうですね」


池田さん

「やっぱり成人式は一生に一度のことですからね。皆さんとても迷われますよ」


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▲ 店内は振袖の迷路状態・・・。

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Y氏

「やっぱりお客さんは男性より女性のほうが多いですよね?」


池田さん

「いえ、うちの場合は男性の方が数が多いです。うちはちょっと特殊ですね 笑」


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Y氏

「そうなんですね!確かに他の地域の成人式では男性はほとんどスーツですが北九州だけはちょっと特殊ですもんね。なんというか、独自の文化が発展していますよね。でも、そもそも何がきっかけで北九州の成人式はド派手な感じになっていったんですか?」


池田さん

「確か2003年だったと思うんですが、ある新成人が『僕たち金さん銀さんで成人式に行きたいんです』と言ってきたんですね」


Y氏

「え?金さん銀さん・・・ですか?」


池田さん

「そう、金さん銀さんです」


Y氏

「それってどういうことですか・・・?」


池田さん

「要は二人組の男子が全身金色と全身銀色の袴を着て成人式に行きたいと言ってきたんですね。もちろん既成品でそういうものはありませんから京都のメーカーさんなどあちこちあたってみたんですが『無い』と」


Y氏

「そうですよね、もしかしたら金だけ、とかならありそうですけど金と銀 両方揃いでとなるとなかなか難しいかもですね」


池田さん

「それなら特注で作ってみようと思って作ったんです。本人たちが当日その姿で成人式に行けるとなったら嬉しいじゃないですか。当時はスペースワールドで成人式をやっていたんですが、金さん銀さんで行ったらすごく目立ってすごく良かった!と喜んでくれて」


Y氏

「当時はみんなスーツですよね?」


池田さん

「そうですね、スーツか袴の人でも単色でせいぜい下が縦縞ぐらいでしたね。なので金さん銀さんどこで作ったの?ということになって後輩や兄弟とかに口コミでワーッと広がって。それで次の年にたくさん来て、さらに次の年にはもっと来てという感じでどんどん増えていったんです。↓これが実物です」


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Y氏

「うわ〜キラキラ!演歌歌手みたいですね 笑 でもお祭りのような北九州の成人式のルーツがここにあると思ったらなかなか感慨深いものがありますね〜。ちなみに衣装はレンタルですか?それとも買取ですか?」


池田さん

「基本的にはレンタルです。女子は買う人もいるんですが、ほぼレンタルですね。特注で作ったものはオーダーレンタルという形になります」


Y氏

「オーダーレンタルって何ですか?」


池田さん

「特注でお客さまのオーダーを取り入れて作るけどレンタルというスタイルです。オーダーで要望の通りに作ってレンタルしてもらって、翌年には既成品としてレンタルで出すやり方ですね」


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Y氏

「↑こういう感じで名前が刺繍されているものがあるじゃないですか?これは買取になるんですよね?」


池田さん

「いえ、名前は生地に直接刺繍しているわけではなく、刺繍のワッペンになってるんです。なので取り外しができます。ワッペンは記念品として本人に渡しています」


Y氏

「なるほど、そういうことだったんですね!でもオーダーレンタルということは年々在庫数は増えていってるということですよね?」


池田さん

「はい、毎年どんどん増えてます。倉庫は山になっていますね 笑」


Y氏

「ちなみにそれって見せてもらうこととかできませんか??」


池田さん

「はい、大丈夫ですよ」


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池田さん

「↑この箱、全部成人式の袴です」


Y氏

「うわ〜!めちゃめちゃたくさんありますね!!」


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池田さん

「↑こんな感じでたくさん詰まってます」


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Y氏

「↑この奥の方にあるやつも全部ですか?!」


池田さん

「はい、そのあたりも全部です」


Y氏

「スゴイ数ですね・・・!注文っていろんな地域からあるんですか?」


池田さん

「問い合わせは日本全国からあります。関西からわざわざうちまで来店してくださる場合もありますよ」


Y氏

「なるほど、そりゃあとんでもない数になるはずだ・・・」


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Y氏

「↑ここらへんにあるのはカラフルでいかにも北九州!って感じですね〜!それにしてもこんなにド派手な生地がよくありますね。さすがに生地から作ったりはしてませんよね?」


池田さん

「生地から作る場合もありますよ」


Y氏

「あるんですか?!相当お金かかりますよね??オーダーレンタルなのに生地から作ってたらぶっちゃけ利益出せませんよね・・・」


池田さん

「はい、正直利益が出ていない商品というのもありますね。まあ喜んでもらえるなら良いかな〜と。できるだけNOとは言いたくないですからね。なのでなんとか希望を叶えれるように頑張っています」


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Y氏

「でもこれだけ個性的なデザインですから、たくさんの要望を個別にひとつひとつ受けていたらかなり大変ですよね?スタッフさんはどれぐらいいるんですか?」


池田さん

「スタッフは10人ちょっとですね。毎年1000人分ぐらいの注文がありますので団体での注文の場合はリーダーを決めてもらってやり取りはリーダーに代表して行ってもらっています。着付けは当日に専門の人に来てもらってます。今年だと600人ぐらいの着付けをしなければならなかったので着付けの先生が50人ぐらい来ましたね」


Y氏

「600人もですか!着付けはここでやるんですか?」


池田さん

「はい、この倉庫を片付けてここにズラッと並んでやっています」


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池田さん

「↑ 上にロールがあるでしょう?あれは撮影用の背景紙です。当日はここがスタジオにもなるんです」


Y氏

「なるほど、ここで一連が完結できるようになってるんですね。当日は北九州市以外からも着付けに来るんですか?」


池田さん

「山口県であれば下関、周南、下松、光などからも来ますね。あとは大分の中津とか」


Y氏

「成人式の後、衣装はどうするんですか?」


池田さん

「郵送で返却してもらっています」


Y氏

「郵送になるんですね。あんなド派手な格好をしていてもちゃんと送り返してくると考えたらけっこういいやつジャンって感じがしますね 笑」


池田さん

「そうですね、みんな普通の子ですよ。成人式の日とその前後は仕事の休みを貰わなければいけないので、その前は休みなく必死に働いたりしていて。成人式まであと4日!超楽しみ!!とか遠足の前の子たちみたいでカワイイですよ」


Y氏

「ホントにその日を楽しみにしてるんですね」


池田さん

「あと、成人式前後はこの周辺の美容室やネイルサロンなどの業界を動かしているようなものですからけっこう経済にも貢献していますよ」


Y氏

「ですよね、そこそこのお金が動きますからね。値段は物によってバラバラだとは思いますがトータルでどれぐらいの金額がかかるものなんですか?」


池田さん

「安い人だと5万円ぐらい、高い人で40万円ぐらいですね。大体平均すると一人15万円ぐらいですかね。衣装だけなら10万円ぐらいですが扇子とか旗も作っていますのでその分が少し加算される感じです」


Y氏

「扇子もここで頼めるんですか?」


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池田さん

「はい、扇子もひとつひとつ要望を聞いて一本ずつ名前を入れています」


Y氏

「扇子でも既成品ではなく こうしたいという要望を聞いているんですね?」


池田さん

「そうです。毎年1000本ぐらい毎年作っていますので扇子だけでも相当な手間と時間がかかっています。京都の職人さんが竹からひとつひとつ手作りでやっています。当日スーツだけど記念になるからと扇子だけを作る人もいますね」


Y氏

「確かに成人式で残っているものといえば写真ぐらいですが扇子なんかのモノが残ると記念になっていいですね」


池田さん

「それから1メートルぐらいある特大扇子も作っています。もちろん特注です」


Y氏

「1メートル!デカっ!笑 そういうのって作ってるところがあるんですか?」


池田さん

「いえ、普通では無いです。かなり色んな所をあたって探したのですが無かったので看板屋さんに特注で作ってもらっていますね」


Y氏

「看板屋ですか!あれほど巨大になると看板屋とかじゃないと作れないんですね」


池田さん

「あとは写真も撮影していますのでそのあたりも含めると大体トータルで15万円ぐらいですね」


Y氏

「でも一日のために15万円ですよね。そのために必死でお金を貯めて頑張っていると思ったらなんだか憎めないですね 笑 ちなみに最高額ってどれぐらいだったんですか?」


池田さん

最高額は100万円を超えた人もいますよ


Y氏

「え〜?!100万超えですか?!それってどんなものだったんですか?」


池田さん

「女性なんですが、スワロフスキーを全体に散りばめたやつです。もちろん既成品ではありませんから職人がひとつひとつ貼り付けて作りました。まあ正直採算度外視という感じでしたけどね 笑」


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池田さん

「↑男性だったらこの衣装なんかはけっこう予算と手間がかかっていますね」


Y氏

「こ・・・これは?」


池田さん

「この衣装、電飾で光るんですよLEDで。当日めちゃめちゃ光っていてかなり目立ってましたね。この子は密着取材でTVにも出てました」


Y氏

「これ下駄もスゴイですね」


池田さん

「そう!その20cm厚底の下駄も素材からこだわって特注で作ったものなんです」


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Y氏

「めちゃめちゃ分厚い!お弁当箱っぽい!もちろん既成品ではこういうのはありませんよね 笑」


池田さん

「もちろん既成品では存在しません 笑 あと、だいぶ前に虹キングという伝説の子もいましたね」


Y氏

「虹キング!!それはいったいどういう?」


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池田さん

「↑ 衣装が虹色なんです。彼が自分でデザインして絵コンテから作ってきたんですよ。羽織紐も虹色で。虹キングの名前は今の子達からも聞きますね」


Y氏

「伝説の人として今でも語り継がれているんですね」


池田さん

「その後の代にはチーム虹というのも作られて虹色の衣装を揃いで作ったんですよ」


Y氏

「チーム虹!虹キングの意志が受け継がれてるんですね?」


池田さん

「そうです、チーム虹の女の子でウエディングドレスもうちで作った子がいるんですが、その時のドレスも虹色にしていましたよ ↓」


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Y氏

「おぉ!成人式から結婚式まで!なんだか人生をサポートしている感じですね。いや〜ホントに独特の文化ができていて面白いですね。チーム虹は成人式の日は髪の毛も虹色だったんですか?」


池田さん

「はい、髪の毛も虹色で」


Y氏

「髪の毛を染めたりとかもやるんですか?」


池田さん

「さすがに髪はやっていませんね。髪は美容室でやってもらって、その後うちに来てもらうようにしています。打ち合わせの時はみんな普通なので当日突然すごい髪型で現れて一瞬誰かわからない時がありますね 笑」


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池田さん

「↑ 例えばこの子は・・・」


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池田さん

「↑ 普段こうですからね」


Y氏

「おぉ!めっちゃ普通!笑」


池田さん

「『誰?!』って聞いたら『オレですよオレ!』みたいなのがけっこうあります 笑」


Y氏

「なるほど〜、いつもと違う自分になれる日、もはやこれは祭りですね」


池田さん

「一生に一度のことなのでみんな目立とうと頑張ってますね」


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池田さん

「↑ 後で見返せるように成人式の写真をたくさん載せた冊子も毎年うちで作っていますよ」


Y氏

「これはどういうものですか?衣装のカタログ的なものですか?」


池田さん

「そうですね、カタログという意味合いもありますけど、どちらかと言えば記念品とか想い出という感じですね。こういう形として残るものはやっぱり嬉しいじゃないですか」


Y氏

「確かに。写真を撮ったとしても自分とその周りだけですからね。こういうものがあると全体の様子が残って良いですね」


池田さん

「500円で販売しているんですが成人式に参加した新成人以外にも後輩が買いに来たり近所の人が買いに来たりもします」


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池田さん

「数年前は成人式に雑誌がよく取材に来ていたんですけど最近は雑誌自体が減ってきて誌面に載ったりすることも少なくなったんですね。雑誌も少し来るには来るのですが、写真を撮ってもらったのに誌面に載っていなかった!なんてこともよく聞くんです。載りたかったのに〜とガッカリしている子がたくさんいたので じゃあうちでやろうと思って作るようになったんです」


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Y氏

「ところで成人式の注文はどれぐらいの時期から来るんですか?早い人だと半年前ぐらいからですかね?」


池田さん

「いえ、早い人だと前の代の成人式が終わった直後から相談や注文が来ます」


Y氏

「おぉ!やっぱり成人式に対する本気度が違う!笑」


池田さん

「先輩の成人式を見た子たちがすぐに問い合わせてきますね。4月の今時点で数百件注文が来ていますよ」


Y氏

「そうなんですね!すでにそんなに来ているとは・・・。人気のデザインってどういうものなんですか?」


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池田さん

「黒、赤、白、金のものが人気ですね。最近は銀色なんかも人気があります」


Y氏

「おめでたい色ですね〜!ちょっと見せてもらうことはできませんか?」


池田さん

「いいですよ」


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池田さん

「何色がいいですか?」


Y氏

「そうですね〜、じゃあ赤いやつでお願いします」


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▲ そして持ってきてもらったのがこちら。

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▲ 赤地に金の刺繍が施され、さらに襟部分にファーが付いたド派手なデザインです。これはワクワクするな〜。

実際に注文してたらこの何倍もワクワクするんだろうな。

そんなことを考えていたらなんだか・・・・・・着てみたくなってきた!

Y氏

「あの〜、着てみることとかできませんか・・・?」


池田さん

いいですよ


Y氏

「ホントですかー!!お願いします!!」


そしてちゃちゃっと着付けをしてもらい完成した姿がこちら・・・・











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▲ じゃ〜ん!どうですか?!もはやフェニックス!!今にも羽ばたきそうだな!!

しかし、なんなんだろう、この高揚感。ずっしりと重厚でテンション上がります。

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▲ 後ろのフォルムはこう!すごいよ!すごいよ!

Y氏

「けっこう着心地も良いんですね〜。そしてものすごい暖かい!高級布団を身にまとっているような感じがしますね」


池田さん

「当日、寒いからカイロを貼っていったほうが良いですかね?とよく聞かれるんですがカイロしたら暑くて大変なことになるよと伝えています 笑」


Y氏

「みんなこれを着るために一年間頑張ってお金を貯めているんですね。実際に着てみたら祭りを楽しみにしている気持ちがちょっとわかったような気がします」


池田さん

「たった一日の祭りに向けてお金を貯めて真剣にデザインとかも考えて頑張っていると思ったらけっこう健気ですよね 笑」


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▲ う〜ん、これは楽しい・・・。

北九州の成人式のルーツからデザインの話、そして費用の話まで、普通では知れないことをたくさん教えてもらえて非常に面白かったです。

北九州のド派手な成人式に対しては色々な意見がありますが、今では伝統芸能になっている歌舞伎だってもともとは「傾奇者(かぶきもの)」と言われる奇抜な格好をしたサムライがルーツになっているわけです。

歌舞伎みたいに伝統芸能に・・・・・・は ならないかもしれませんが、この成人式の衣装もそれはそれで一つの文化として面白いんじゃないかと個人的には思います。(もちろん式の最中に飲酒をするとか警察のお世話になるなどの面は別としてですよ)

さて来年はいったいどんなスゴイ衣装が現れるのか。今から楽しみにしたいと思います。

【みやび情報】

住所:福岡県北九州市小倉北区宇佐町1-4-20

お問い合わせ:093-531-6311

メール:a@shakan.cc

ホームページ:http://www.shakan.co.jp/miyabi/

Facebook:https://www.facebook.com/miyabikitakyusyu/

Y氏(山田全自動)
ふるほん住吉店主:Y氏(山田全自動)
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福岡で古本屋「ふるほん住吉」の店主をしつつ、ブロガー/イラストレーター/執筆業などをしながら自由気ままに暮らしています。著書:福岡路上遺産(海鳥社)、福岡穴場観光(書肆侃侃房)、山田全自動でござる(BOOKぴあ)など
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