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佐賀の中央マーケットなどを紹介する自主制作本「呉服元町商店街」

佐賀の中央マーケットなどを紹介する自主制作本「呉服元町商店街」を買ってみました。かなりオススメです!

自主制作本「呉服元町商店街」はInstagramの@saga_chuoumarketEDITORS SAGAで発信されている佐賀の中央マーケットを中心とした情報にプラスして、そこにある飲食店や小売店に取材を重ねて聞き取った「思い」などを記録した本です。(※書籍写真は9/1【記念イベント開催】中央マーケット探訪が本になりました!自主制作本「呉服元町商店街」より引用、以下の写真も同じ)

呉服元町商店街とは?

呉服元町は佐賀市街の中心に位置する町で、旧長崎街道沿いにあたる通り沿いにあります。元々は願正寺の参拝客向けに商店等ができはじめ、幕府の役人や長崎奉行をもてなす施設などもあったのだとか。近代以降も商業施設や金融機関等が集中する佐賀随一の町として発展したといいます。

戦後は満州からの引揚者を中心にバラック商店街が形成され、それが発展して現在の中央マーケットになったのだそうです。

呉服元町には平成21(2009)年までアーケード商店街が伸びていましたが、現在は撤去されています。

個人的に呉服元町の思い出としてはスポーツ用品店の「アリオカ」が記憶に残っています。僕は子供の頃、佐賀の鹿島市に住むサッカー少年だったのですが、地元のスポーツ用品店ではなく呉服元町のアリオカでスパイクやジャージを買うのが一種のステータスでした。地元のスポーツ用品店にも同じようなもの(同じような、というか、おそらく全く同じもの)が売られていたのでしょうけれど、サッカーチーム内では「地元で買うのはダサい、アリオカで買ったほうが価値が高い」という謎の風潮があり、母にお願いしてわざわざ連れてきてもらっていました。現在アリオカがあった場所はコインパーキングになっているようです。

本の概要

「呉服元町商店街」の書籍は町並みの紹介もあることはありますが、主にそこで商売を営む「人」にスポットを当てています。

こういった類の書籍ではこの建物がレトロで良い!であったり、ここにこんな面白い看板が!というような部分にばかりフォーカスしてしまいがちですが、きちっとどういう人達がどういう思いでそこにいるのか、という点に重きを置いているのが斬新です。

「レトロ」や「ノスタルジー」といったニュアンスの言葉がほとんど出てこないのもおそらく著者の東さん(@763hihihihi)のこだわりなのかな、と感じました。

「レトロ」という言葉は非常に便利で、その一言を使えば読む人に簡単に情景を想像してもらいやすくなります。ただ、多用されすぎてもはや安い言葉にもなってきています。ホーロー看板や昭和の映画ポスターをベタベタ貼って「レトロ」を売りにする居酒屋、それはホントにレトロなのか・・・。

単にノスタルジー趣味から派生した書籍ではない、もう一つ先の気概のようなものを感じる内容です。

「人」にスポットを当てているから、取材に費やした時間も驚異的に長かったようです。建物や町並みの取材であれば一日、下手をすると数時間で終わってしまいますが、この書籍の取材時間は驚異の二年。一店舗取材するために半年ぐらい通い詰めた店もあるのだそうです。

※2019年9月1日に呉服元町の願正寺にて行われた出版記念イベントの様子

取材をはじめた当初は商店街の人からの反応は若干冷ややかで「こんなところ取材してどうするの?」というような声もあったそうですが、記録に残したいといいう気持ちから、少しづつ町に寄り添うように取材を重ねていったそうです。

ほとんど得はない、なんなら時間と労力を大幅に消費する以外ないけれど、自分で自分を「これだ」というものに定義して起こす行動というのはある意味最強です。

本が完成する頃には「店を閉めようと思っていたけど本に載せてくれたからもう少し続けてみようと思った」と言ってもらえるほどにまで信頼関係を築き上げることができたそうです。

東さんはイベントの際に「記録に残す大切さ」という事を度々言われていました。

我々が考える記録というのは、どういう店舗があったのか、どういう町並みだったのか、といったデータ的なものになりがちですが、東さんが考える「記録」は、その一歩先にある、どういう人がどういう思いを持っていたのかという、もっとRAWなものだと感じました。

カメラが進化したり、動画が簡単に取れるようになったり、何かを記録することは容易になっています。また、グーグルアースやストリートビューのようなメディアがブルドーザー方式で町をガ〜〜〜〜っとデータ化しています。しかし、そのいずれにも、もっとも重要な人の思いや考えみたいなものは記録できません。

そういう意味で「呉服元町商店街」の書籍のような記録は非常に貴重だし、ただ単に資本力や行動力だけではなし得ない事なのではと思います。

「呉服元町商店街」の書籍が完成したと知った時は、写真を中心としてキャプションを数行添えた感じのものを想像していましたが、届いて読んでみたら、丁寧に紡がれた文章から静かに漂ってくる熱い思いにグッと来るものがありました。と同時に自分には絶対にできない凄い事だな〜と軽く凹みました笑

挿絵を担当されている中村美和子さん(@jugemgirl)のイラストが文章に花を添えている点もぜひ注目してもらいたいです。

編集には野村レオさん(@leoleonnii)、書籍は当初、店舗紹介的なニュアンスが強かったそうですが、全体の方向性などの舵取りをして現在の完成品の形まで持っていったそうで、グッジョブです。ちなみに野村さんは福岡の天神にある書店&カフェ「本のあるところ ajiro」にJOINして選書等を担当されるそうです。

まとめ

このところ町や観光を紹介するような活動に思うところがあり、少し距離を置いていたのですが、個人的にも今後のヒント、そして目標となるような一冊に出会えたような気がします。

この書籍を読んで呉服元町商店街・中央マーケットを訪れてみると通常の3倍ぐらい楽しめるのではないかと思います。福岡市内だと今のとこと博多駅の丸善と天神の「本のあるところ ajiro」で購入できるみたいです。

「呉服元町商店街」のご購入はこちらから。
https://gofukumarket.thebase.in/

書籍の取り扱い店舗一覧はこちら。
https://gofukumarket.thebase.in/about

Y氏(山田全自動)
ふるほん住吉店主:Y氏(山田全自動)
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福岡で古本屋「ふるほん住吉」の店主をしつつ、ブロガー/イラストレーター/執筆業などをしながら自由気ままに暮らしています。著書:福岡路上遺産(海鳥社)、福岡穴場観光(書肆侃侃房)、山田全自動でござる(BOOKぴあ)など
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