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箱崎4丁目の穴

箱崎4丁目で見つけた穴について考えてみた。P1130805
▲ 福岡都市高速の箱崎出入口と東浜出入口のちょうど中間あたりで東側を見ると、お潮井浜から筥崎宮の参道を一直線に見渡せる場所がある。

ごく一瞬ではあるが、このまっすぐな道を見るのが好きで高速バスに乗った時などは楽しみにしている。

ある日、例のごとくその景色を見ようとした際、ふと面白いものに気づいた。

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▲ やや箱崎出入口側に近い住宅街の一画に大きな「穴」が口を開けているのだ。

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▲ 穴の上にはゴルフ用品店の「つるやゴルフ」の看板が見える。調べてみると、穴の上(というか先)には複合商業施設の「ボックスタウン箱崎」があるようだ。

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▲ 近くまで行ってみると穴の正体は箱崎4丁目の地下道であった。

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▲ 歩行者専用の薄暗い地下道で「汐井地下道」という名前がつけられている事もわかった。

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▲ 西側入口から入ると突き当りは二股になっていて、一方(東入口)はボックスタウン箱崎の隣、もう一方(北入口)は竹中工務店西日本機材センターの西側に通じていた。

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▲ しかしこの地下道、なんとも不思議である。歩いてみるとよくわかるのだが、ほとんど意味を成さない道のように思える。

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▲ 地下道の上には貨物専用の「博多臨港線」が走っている。線路を避けるための通路であることは理解できる。

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▲ しかし、地下道のすぐ横には線路をまたぐ歩道橋も存在しているのだ。歩行者専用という事であれば、どちらか片方のみではダメだったのだろうか?

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▲ 地下道には手すりなどが設置されているわけでもないので、バリアフリーを考えて歩道橋とは別に地下道を作ったという事でもなさそうである。

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▲ さらに言うと、この博多臨港線は地下道から約50mほど南の部分で終わっている。

わざわざ地下に潜らずとも、普通に歩いていけば線路の向こう側には容易にたどり着けるのである。

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▲ 唯一この地下道の意義を見出すとしたら、博多臨港線の終着点までの数十メートル、そしてそこから折り返しの数十メートルをショートカットできるという点のみである。

このために地下道を通したとは思えないので、博多臨港線の沿革やこのエリアの構造を調べてみたところ、ある程度の結論を導き出すことができた。

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▲ 現在、博多臨港線はこの地下道付近が終着点であるが、かつてはさらに数km長く、長浜の「福岡市場前」まで伸びていた。しかし、貨物輸送の需要減に伴い、昭和57年から昭和60年の間に福岡市場前までの路線が廃止され現在に至っている。

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▲ 地下道の竣工は昭和50年であることから、線路を避けるための地下道であったということはいずれにしても間違いないようだ。

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▲ ただ、ひとつ疑問が残る。歩道橋があるのになぜ地下道を通したのか、という点である。(もしくは、逆に地下道があるのに歩道橋を作ったのか)

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▲ これは現在歩行者専用となっている地下道に、かつては車も通っていたと考えれば疑問が解消できるかもしれない。

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▲ まず、この地下道があるエリアの立地について考えてみる。このエリアは北には公園、東は博多臨港線、南は海(お潮井浜)、西は都市高速と海という立地にあり、このエリアを車で出る事ができる唯一の道は、現在、博多臨港線の終着点横の道だけである。

※地下道が作られた昭和50年はまだ都市高速が無い時代であるが、航空写真を確認してみたところ、昭和50年にはすでに都市高速の建設が始まっていた。

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▲ 左側に見える金属の電線部分が博多臨港線の終着点だ。

かつては廃線前の博多臨港線が伸びていたため、ここには踏切があったと考えられる。

唯一の道が踏切で塞がれていたとなると、渋滞を引き起こす事が予想される。

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▲ しかも、このエリアには箱崎漁港もあるため、特に深夜〜早朝には多くの車が行き来しているはずである。

また、緊急避難が必要な場合など、踏切が障壁となるリスクも考えられる。

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▲ こういった、唯一の道が踏切で塞がれているという町の構造を考え、線路を避ける地下道が作られたと推測すると合点がいくような気がする。

博多臨港線が短縮され、唯一の道が踏切という状況が解消された現在では さして意味を成さない無用の長物のようにも思えるが、まるでここを通らなければならないと義務付けられたかのように、人々がわざわざ「穴」に吸い込まれていくのはなんとも不思議な光景である。

Y氏(山田全自動)
ふるほん住吉店主:Y氏(山田全自動)
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福岡で古本屋「ふるほん住吉」の店主をしつつ、ブロガー/イラストレーター/執筆業などをしながら自由気ままに暮らしています。著書:福岡路上遺産(海鳥社)、福岡穴場観光(書肆侃侃房)、山田全自動でござる(BOOKぴあ)など
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