「六本松」の名前の由来になった松がどこにあったのかを古地図で調べてみた
福岡市中央区の六本松。いろいろな文献を調べてみると、六本かどうかはわからないけれども、その名の通り松の木があったことが由来になっているそうです。
ただ、その松が具体的にどこにあったのかという記述までは いずれの文献にも見当たりません。
そうなると気になって気になって仕方がありませんので古地図を使ってその場所を特定してみたいと思います。
▲ まず、福岡城下町・博多・近隣古図で六本松周辺を確認してみます。(※ 地図は「古地図の中の福岡・博多―1800年頃の町並み」【海鳥社 宮崎 克則、福岡アーカイブ研究会 編】より引用)
▲ 「六本松」と書かれている部分がありました。この辺りのようです。
▲ 現在の地図と比較してみると、道筋は当時とほぼ変わっていないようです。
▲ 古地図には松の木が描かれています。
▲ 現在の地図で言うとこの辺り。
▲ 「しばこ」という割烹料理のお店の裏あたりです。
▲ この辺りの曲線を描く道筋は古地図のまま。
当時の人たちと同じ道筋を通っていると思うと感慨深いです。
▲ 「しばこ」の裏辺りに木が生い茂っている場所が見えます。
▲ 一段高くなった場所に一部分だけ森のようになっている所があります。
この中に松があるかどうかはちょっとよくわかりませんでしたが、おそらくここだけは当時の様子をそのまま残している場所ではないかと思われます。
▲ この近辺には地図に名前も載らないような足軽などの軽輩のサムライたちが居住しており、彼らは「ワクドウどん」と呼ばれていました。
「ワクドウ」とはイボガエルのこと。
うっそうとした樹林の中で暮らす彼らを、茂みの中で暮らすイボガエルに例えてそう呼んでいたのだそうです。
そういったエピソードなどからも、上記の森のようになった場所が当時の面影を残すものであると考えることができます。
そして、元禄12年(1699年)の古地図(→地図左下部分を確認)や安永6年(1778年)の古地図(→地図右部分を確認)、さらに宝暦〜天明期(1700年代後半頃)の古地図(→地図中央部分を確認)のいずれを確認してみても、必ず共通してこの場所には松の木が描かれています。
どの地図にも必ずピックアップして描かれるということはそれだけ特徴的であったか、もしくは重要だったからだと考えられます。
私はおそらく、六本松の名前の由来になった松はこの場所にあったもので間違いないと思います。
あまりにもモッサリとしていますのでちゃんと見ることはできませんでしたが、もしかしたら茂みの中には松の木も残っているかもしれません。
▲ もし今度この場所を通ることがあったら、ここに松の木が生い茂っていて、「ワクドウどん」が忙しく走り回っていたのだなぁと思いながら鑑賞してみてください。
なんでもない日常の光景がちょっとだけ違ってみえるかもしれませんよ。
【参考文献】
・古地図の中の福岡・博多―1800年頃の町並み(海鳥社 宮崎 克則、福岡アーカイブ研究会 編)
・九州大学 DIGITAL ARCHIVES 福岡・博多の絵図