日本でダントツに保存樹が多いのは福岡市だった!市役所の人に保存樹についてアレコレ聞いてみた
日本でダントツに法律に基づく保存樹が多いのは福岡市だと知ってましたか??ほんとビックリするぐらいダントツです。
▲ 東区の筥崎宮にやってきました。
なんでも、福岡市は日本でダントツに保存樹多い市町村なんだとか。
保存樹について福岡市役所の人にアレコレ伺える機会を頂いたので詳しく聞いてみることにしました。
▲ 今回色々と教えてもらうのが福岡市役所に勤務する山本さん(右)。
仕事としてではなく、あくまでも個人的な立場で保存樹について広く伝えたいということでメッセージを送ってきて頂きました。素晴らしい熱意!
そしてわたくしY氏と同行するのが「九州の巨人!巨木!!と巨大仏!!!」という九州の巨大なもの図鑑を出版されているオガワさん(左)です。
▲ オガワさんとは以前にこのブログで本を紹介したことがきっかけで知り合いになり、今回の保存樹取材には絶対に同行してもらいたい!ということで声をかけさせてもらいました。
「山本さん、今日は宜しくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「さっそくですが福岡市ってそんなに保存樹が多いんですか??」
「そうなんです、全国の市町村でも飛び抜けて数が多いんですよ」
「↑グラフであらわすとこんな感じです。福岡市には約1900本の法律に基づく保存樹があるんです」※ 法律に基づく保存樹の数の詳細→保存樹及び保存樹林等指定状況(PDF)
「おぉ!ダントツ!!ぶっちぎりの一位ですね!福岡市ってこんなに保存樹があったんだ!・・・ところで根本的な質問なんですが保存樹って何のために指定してるんですか??」
「一番の理由は都市の美観を維持するためですね」
「なるほど、確かに福岡市は緑が特に多いような気がしますね。頑張って保存樹を指定してきた効果が出ているんでしょうかね。筥崎宮の中にもたくさん保存樹があるんですよね?」
「はい、筥崎宮の中には約20本の保存樹があります。↑この地図の緑色の点で示しているのが保存樹です」
「じゃあ早速見に行ってみましょう!」
「↑これはもちろん保存樹ですよね?」
「これは当然保存樹でしょうね〜」
「いや、実はこれは違うんですよ」
「え、こんなにデカイのに保存樹になってないんですか?!」
「もう枯れちゃってるんですかね?」
「葉っぱもしっかりしているので死んではいないです。この樹は筥崎宮の御神木になっているのであえて保存樹に指定しなかったとか神社側への配慮があったのかもしれないです」
「まあでもこれは保存樹に指定するまでもなく大切にされるでしょうね」
「こっちの方に保存樹があります」
「保存樹があるところにはこういった看板を建てるようにしています」
「注意深く見たことはなかったですが確かによく神社なんかにありますね。指定番号というのが書かれていますがこれは何なんですか?」
「保存樹には区別に全部番号が振られていて管理されているんです。例えば東区の場合は「東◯号」という番号になっています。ちなみに東1号はここ筥崎宮の中にありますよ」
「へぇ〜さすが筥崎宮!筑前一宮だけありますね!」
「この辺りの木はほとんど保存樹です。東1号〜東20号ぐらいまでのものがここに固まっています」
「でも保存樹って近くに目印みたいなのが建てられていませんでしたっけ?」
「かなり古くに指定されたものには建てられていないことがあるんです」
「こっちのほうのやつはちゃんと標示も建てられていますよ」
「さっき見たのは東20号ぐらいまでだったのにこの保存樹は急に東146号になっていますね??」
「そうですね、この保存樹はわりと最近指定されたので数字が大きい号数になっています」
「保存樹ってやっぱり神社にあることが多いんですか?」
「約1900本の保存樹で一番多いのは神社ですね。あとは個人の家やマンションの敷地内なんかにもちょこちょこあります」
「公園にも多そうですね」
「あ、公園の場合は市の土地が多いので保存樹にはなってないことが多いんです」
「え?どうして市の土地だと保存樹にならないんですか?」
「保存樹事業は民有地にある緑を保存するというのが目的なんです。市が管理している土地は樹木を保存するのは当然という判断からあえて保存樹に指定はしてないんです」
「なるほど、自分のものは自分で管理して当然という考え方なんですね」
「そもそもどういう基準で保存樹に指定されるんですか?」
「ざっくりとした基準では幹周りが1.5メートル以上、高さが15メートル以上のいずれかを満たすものです。あとはフジとかだと枝葉の面積も基準になったりします」
「へぇ〜樹齢何年とかで決めるんじゃないんですね」
「はい、成長する速度は樹によって違いますので樹齢は特に考慮されないんです」
「なるほど〜」
「あとは樹木医という樹のお医者さんがいるんですけど、危険度と衰退度を5段階評価してもらって最終的な判断をしています。立派に見える樹でも実は中が腐っていたりということもあるんですよ」
「樹木医という人がいるんですね!そんな職業があったんだ〜」
「会ってみたいですね!でもどうやって診断するんですか??ちょっと切ったりするんですか?」
「幹を叩いて音で判断したり、装置を巻きつけて音波の跳ね返りをみたりして診断するんですよ。僕も樹木医の卵のような「樹木医補」という資格を持っていますので樹木の病気を判断したりすることはできますよ」
「そうなんですね!樹木医補!確かに山本さんってそんな雰囲気ありますよね!服の色とか!」
「はい、服の色は少し意識しました笑」
「じゃあ今度は一本だけポツンとある保存樹を見に行ってみましょうよ」
「たぶん結婚式場の横にあるやつだと思います」
「これですね!なかなか立派な樹ですね!」
「質問!保存樹に指定されることで持ち主に何かメリットとかってあるんですか?」
「大きな樹だと剪定をする時に一回で10万円とか20万円とかかかってしまうんです。保存樹に指定されると、条件はありますが、その剪定費の半分を市が補助しています」
「そっか、剪定費が高いから切ってしまおうということを防止できますね」
「じゃあ逆に、勝手に切ってしまった場合とかにペナルティはあるんですか?」
「そこまで強い権限はないんですが、伐採する場合には保存樹指定解除の手続きが必要になります」
「なるほど、あくまでも自主的な保護を促す制度なんですね」
「ところでオガワさんは巨大な樹を探す時ってどうやって探しているんですか?」
「事前に調べたりもするんですけど、不意に見つけることも多いですね」
「確かに巨大な樹って大きいから目立ちますもんね」
「でも大きいだけじゃダメなんですよ!背景とのバランスとか樹全体のフォルムもとても重要なんです」
「わかります」
「篠栗九大の森に落羽松っていう池の中に樹が生えている場所があるんですが、そこがずっといたいぐらいステキなんです」
「篠栗九大の森は僕もよく行ってました!篠栗九大の森 良いですよね〜!」
「・・・・・・・・・・二人ともなんかすごいな・・・・(話についていけてないY氏)」
「・・・・・じゃあ次はここに何本かある保存樹を見に行ってみましょうか!」
「あ!ここか!ここは確か安部晴明が関係している神社ですよ!→参考:枯れていたけれど安部晴明が白龍を召喚して復活させ、のちに千利休も使った井戸が馬出にあった」
「ここには5本の保存樹があります」
「ここの樹も保存樹だったんだ〜!こうやって注意して見てみるとけっこう楽しいものですね〜。」
「あと、ここの保存樹の石柱は古いタイプのものです。よく見ると「保存樹」の下に福岡市のマークがついていますよ」
「古い石柱もシブくていいですね」
▲ その後、居酒屋でも保存樹談義が続いたのですが、オガワさんは公園にあるタコや亀の遊具マニア、山本さんは公園整備の仕事もしていることもあり内容は徐々に公園の遊具の話に・・・。
▲ オガワさんは公園にある遊具の形を見るだけでどこのものか当てることができるというすごい特技を披露。
「これは和布刈公園ですね」
「これは春吉公園ですね。福岡市の公園はタコよりも亀が多いんですよ」
「すげぇ・・・・・・・もしかして山本さんも保存樹見ただけでどこのやつかわかったりしませんよね・・・?」
「さすがにそれはムリです笑」
▲ その後も、まだまだ書ききれないほどいろんな話を聞かせてもらいましたが、保存樹から遊具まで色々と楽しめた一日でした。やっぱり専門家やマニアの人の話は面白いです。
ちなみにオガワさんは巨人・巨木・巨大仏の本の第二弾も予定しているそうなのでそちらも期待大ですよ!
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